やってはいけない任意売却

各地の梅の名所が紹介されています。暖かい春はもう目の前ですね。の時期は任意売却の決済が多くなります。当事務所も3月までに5件の決済があり結構、忙しいです。

最近、「絶対にやってはいけない任意売却」というページを目にしました。面白そうな内容でしたので読ませていただきましたが、今日はこの感想です。

のページは、いわゆる身内間売買による任意売却で300万円もの手数料を支払わされたという悪徳業者(?)の話ではじまります。そして最後は任意売却はやってはいけない、自己破産こそが最善であるという結論です。その理由として、任意売却には次のような問題があるとの指摘です。

つ目は、任意売却では売却後に借金が残ること。

2つ目は、任意売却は弁護士法違反であること。

3つ目は、任意売却は自己破産で解決できること。

 

さらに、任意売却をすると、「自己破産も個人再生もできなくなる」と警告し、任意売却をしてもよいのは、次の場合に限られると書いています。

1 売却によって残債以上の利益がでる、また最低でも相殺できるとき。

2 相殺できない場合でも、その残債が3年間で無理なく支払えるとき。

読んでみて、なるほどと感服するところもありますが、全体として賛同しかねるところが多いです。以下に私の考えを述べます。

まず、任意売却では法外な手数料をとられるについてです。

宅建業者の媒介手数料が、売却価格の3%+6万円以下(400万円超の場合)となっていることは、ご承知のとおりです。仮にこれ以上の手数料を請求したら文字通り法外ですが、業務停止処分を覚悟でそんな請求をする宅建業者がいるとは思いません。

それに、任意売却では手数料を売主からいただくことはありません。住宅ローンの支払いない人に手数料を求めても無理ですから、債権者が負担するのです。にもかかわらず、300万もの手数料を取った業者とは一体、何者でしょう。

次に、任意売却では借金が残ってしまう、についてです。

自宅をできるだけ高く売って、残債の負担を軽くするのが任意売却です。しかし、いまの不動産市況ですから、残債は避けられません。ところで、自己破産は経済的再生のための法的権利です。ですから私も任意売却の依頼者には、その権利があることを説明し、また残債の支払いができないのであれば、その選択を薦めざるをえません。

しかし、債務者の置かれた状況や考え方はいろいろですから、何が何でも自己破産をしなさい、というわけにはいきません。依頼者のなかに、2度目の自己破産を考えている人がいますが、これに対しては、借金がゼロになるなら結構でないかという人もいれば、自己破産をそんな簡単に考えることはできないという人もいて、様々です。

たしかに、自己破産をして免責を受ければ借金はなくなりますし、そこにはデメリットもほとんどありません。だからといって、自己破産が最善だと断言できるでしょうか。借金で苦労したくないという思いはもっともです。できればそうしたいでしょう。しかし、債権者と合意して生活に支障のない範囲で残債を支払っていくという人がいてもよいのでは、と思うのですが。どうでしょう。

次に、任意売却は弁護士法に違反する、についてです。

 

不動産業者は、ただただ土地建物の売買を媒介するのが仕事であり、債務整理目的の売買は許されないからだ、というのがその理由です。

任意売却が債務整理に結びつく面があることは否定しません。またそうであるから任意売却をするのです。しかし任意売却が弁護士法違反だというのは飛躍しています。任意売却であれ一般の売却であれ、売却行為自体に変わりはないのです。

また、債権債務に係わる行為ばすべて弁護士法違法だというのも乱暴な話です。弁護士法72条で弁護士独占としているのは、法律事務全般ではなく「法律事件」事務に限られると一般に理解されています。そして法律事件とは、「法的紛争事件」と解されのです。したがって、弁護士法との関係では、任意売却が法律行為であることは間違いないとしても、法的紛争性をもつかどうかということになるでしょう。

しかし任意売却は、どこまでも債権者と債務者の合意に基ずく行為ですから(そうでなければ任意売却はそもそもありえません。)、そこには法的紛争性といったものは存在しないのです。このため宅建業者の弁護士法違法などというものもまた、存在しないことは明らかでしょう。

次に、任意売却は自己破産でも解決できる、についてです。

自宅の所有者が自己破産をすれば、自宅は管財人によって処分されます。破産法上、処分は競売によることになっていますが、実際には任意売却が多いです。この結果、任意売却で身内等が物件を買い取れる可能性もでてきます。 しかし、どのような処分方法を選択するかは管財人の判断ですから、必ずしも任意売却になるとは限りません

また、管財人は債権者に対する配当原資を確保するため売却益の一部(5〜10%)を破産財団に組み入れます。しかし、これでは担保債権者の配分額が少なくなりますから、特に後順位の担保債権者は簡単に任意売却を認められなくなります。この結果、管財人の任意売却は困難になり、結果として競売になってしまうこともあるのです。
以上から、自己破産における管財人の任意売却は必ずしも保証されたものにはなりえません。

最後に、任意売却をすると自己破産をしても免責されない、についてです。

破産状態で資産を売却等する行為は、すべて禁止されていて、その行為は裁判所により取消されると書いています。任意売却は、詐害行為であるという考えからでしょう。 

確かに、一般債権者の関係ではその説明は誤りではありません。しかしここは優先弁済権(別徐権)のある担保権者である債権者との関係です。

裁判所は、「抵当物件を相当な価格で売却し、その売却代金を抵当権者等の優先債権者に弁済しても詐害行為にはあたらない」とします。

任意売却は、正に相当な価格で担保物件を売却する行為に他なりません。従って任意売却は詐害行為にはあたらず取消されることにもならないのです。任意売却が一般に広く行なわれている所以です。

この点については、「日誌・コラムー任意売却すると免責されないか?」でも説明していますので、あわせて読んでいただければと思います。

最後は、任意売却が許される2つの場合、についてです。

その1つは、売却によって残債以上の利益が出る、または最低でも相殺できる場合です。

しかしこれは一般の売却であって、何の問題もあろうはずがありません。問題があるとすれば、現在の不動産市況下、売却益が出る物件などまず、ありえないという現実でしょう。

2つは、残債を3年で無理なく支払いる場合です。

しかし、担保価値下落の中、資産売却による多額の残債を再生法によって圧縮してもなお、3年(最長5年)で支払いる人は少ないでしょう。それどころか、任意売却する人の多くは職を失うなどで、法的整理をしようにもその費用も捻出できない状況にあるのが現実です。

季節は着実に暖かい春に向かい、桜だよりもすぐそこです。

しかし、残念ですが経済の厳しい環境は一向に変わってはいません。こんな中で住宅ローンをかかえる多くの人が支払いの不安に直面しています。とりわけ職を失った人にとって、住宅ローンの悩みは深刻です。

  

 

 

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