今年の夏の任意売却

桜の枝は葉を落とし、イチョウの葉は黄金色に染っています。
秋、深まるですね。
この日記・コラムも前回が7月でしたから、すっかりのご無沙汰です。
これほど間が空くはずではなかったのですが‥‥。それにしても、今年の夏の任意売却はいろいろありました。

 

もうすぐ7月というある日。渋谷区で飲食店を営む社長から任意売却の依頼がありました。公認会計士事務所の勧めがあっての話です。
急ぎ銀行の任意売却の承認を取り付け、業者との媒介契約も結びました。ところが7月の下旬には社長はご他界です。自殺でした。遺言書どころか書き残しの一片もありませんから、詳しい理由はわかりません。

 

依頼を受けたときには、『これで仕事が続けられる。がんばらなくては‥‥。』と元気に話してくれていたのですが、本当に残念です。

あれから3か月が過ぎました。この間、遺族の委任を受けて相続手続きを進めてきましたが、それも来週には「相続分割協議書」に印鑑をいただくところまできました。後は相続登記を済ませ、改めて自宅の売却に入る予定です。

 

事業者の相続は結構、大変です。法人の債権債務は、もちろん相続の対象ではありませんが、実際にはそう単純ではありません。会社のほとんどの債務は、代表取締役である社長が個人保証をしているからです。
ビルの賃貸借契約、売掛金、リース料などの債務をそのまま引き継ぐのでは、相続人としてはたまりません。何とかしなければならないのです。

 

しかし、敷金の返還ひとつをとっても、契約では造作物や備品の撤去が賃貸借契約の解約条件になっています。つまり、空っぽの状態にしなければ契約の解約もできないのですから、敷金の返還請求もできません。
かといって、撤去工事費やリースの残債を支払う資金は遺族にはないのです。うまい具合に、現状でテナントを引き受けられる方を探すしかありません。しかし、この景気の悪い中、右から左とはいきませんから、仲介業者を急がせないと敷金はどんどん消えていきます。

 

他方で任意売却の方は予想外でした。住宅ローンには団体信用生命保険が付いいて、保険期間も残っていたからです。
早速、保険金の支払い手続きをとり、社長のローンは消すことができました。共有者の奥さんの分は残りますがわずかです。売却すればローンを全額返済しても、新しい家を購入する資金や老後の生活費を確保できます。

 

しかし、うまくばかりはいきません。財産調査のなかで数千万円に上る個人債務が判明したのです。貸主は同業の社長でしたが、相続放棄を考えなければならないほど多額です。
債務超過の相続では相続放棄をするのが賢明な選択です。相続人は一切の債務を負わなくてもよいのですから。ただし放棄をすれば、債務と同時に自宅の相続もできなくなります。

 

これでは団体生命保険も意味がありません。債務を放棄してもらう以外に方法はありませんが、遺族には無理ですから結局は、私が出向くことになります。
遺族の現状等を説明しながら債権者との話を進めていきましたが、結果は債権の全額放棄でした。ある程度の支払いは覚悟のうえでしたが、想定外でした。すべては亡くなった社長の人柄です。

 

『いまの事業は楽ではないが何とかやっている。正直、惜しい大金ではあるが融資したのは社長個人であり、残念だが諦める。長い間、社長には本当に世話になってきた。この年で大変だが、仕事をしていれば金は取り戻せる。』債権者の社長はそう語りました。

 

景気の低迷するなかで、事業者からの任意売却の相談が増えています。
業態はさまざまですが、厳しい事業環境の下で頑張っている状況は変わりません。7月だけで3件の事業者の任意売却を受けましたが、今後、更に増えることが憂慮されます。
一日も早い景気の好転を願わざるえません。

 

この夏は、2件の競売も取下げました。期間が限られている中で、仲介業者による売却をしていたのではアウトでしたが、幸い近親者による任意売却ができました。
それにしても、1件は9月10日からの期日案件で依頼を受けたのは8月も下旬でしたから、文字通りの綱渡りを強いられました。
債権者の協力もあって、なんとか取下げになりましたが、暑いなかで我ながらよく頑張れたと思います。

 

これまで何回か書いていますが、競売手続きに入ってしまうと任意売却はやっかいです。それに、余分な費用と時間を消費する結果となってしまいます。
債権者との関係の維持に努め、何としても競売をさせないようにしなければなりません。他ならぬ自分のためですから、頑張ってほしいのです。

 

地方から任意売却も、この夏に3件受けました。当事務所は任意売却を首都圏に限定しています。依頼者の顔の見えるところで仕事をしたい、という思いからです。
しかし、事情によっては引き受けざるをえません。それに地方の物件であっても任意売却に特段の障害はありませんから。

 

九州の宮崎市、北海道北見市そして大阪の寝屋川市の3件ですが、依頼者は会社を解雇され横浜市に転職してきたとか、転勤で千葉市に住んでいるが再び戻ることはないとか、それぞれの理由を抱えています。話を聞くと断れないのです。

 

任意売却を受けるようになって2回目の夏も終わりました。
あわただしくしているうちに、季節は間もなく冬を迎えます。そろそろ年相応にゆったりと仕事をしたいのですが、そうもいきそうにありません。
明日も任意売却の依頼者に相模原市で会わなければなりません。そして月末には千葉市での決済が待つています。

 

 

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