任意売却をすると免責されない?

 

自己破産をしただけでは、借金が消えないのはご承知の通りです。
免責のない自己破産に時間と費用をかけても役に立ちません。免責されててはじめて、破産する意味がててくるのです。

免責によって債務はなくなるのか、そうではなく強制的な支払い請求を受けない債務になるだけなのか、議論はありますがあまり意味はありません。
支払に追われることがなければ、それで十分で、余裕ができたら借金を返済しても別段、困る話ではないでしょう。自己破産をしても、義理を欠かせない人はいるでしょうから。

しかし、任意売却をすると自己破産をしても免責されない、となると穏やかではありません。私のページでも「自己破産の前に任意売却をすれば何かと助かります。」と書いていますが、それではインチキ話になってしまいます。

そこで今日は、任意売却と免責について書いてみます。少しわかりにくいかとは思いますが、できるだけ噛み砕きます。

こんなメール相談があります。
『父は現在1億5千万の負債があり、自己破産を考えています。
その前に父名義の自宅と土地を娘2人と娘婿で買い取ることにしています。資金の用意はできていて、抵当権を持っている銀行も担保権抹消を了解しています。
評価額の売買ではあるのですが、自己破産前に買い取ると管財人に否認される可能性が高いでしょうか。なんとか自宅と土地を買い取ることにしたいのです。

この件について妹の相談している弁護士と、夫の相談している弁護士のおっしゃることが理解できないため、困っています。一方の弁護士は、任意売却も自己破産もかまわないと言い、他方の弁護士は財産隠しになりるというのです。』

同じような相談は少なくありません。経済的に立ち行かなくなった人の、最後の砦になる自己破産がですが、破産をしても免責されないでは、困ります。

本題に入ります。

財産のある人が破産決定を受けると、原則として破産管財人が選任されることになります。破産管財人は破産者の有する財産(破産財団といいます。)を換価するため、財産を処分したり、破産前に破産者がした財産の処分行為を否認して破産財団に戻したりすることができるのです。
 
これが相談者が心配する破産管財人の否認行為ですが、一口に否認といっても破産法は詐害行為否認と偏頗(へんぱ)行為否認を区別しています。詐害行為とは、債務者の資産を減少させる行為であり、偏頗行為とは一部の債権者に対する弁済などをいうのですが、どちらも免責の不許可事由である点では変わりがありません。
 
では破産申立て前の任意売却は、否認行為になるでしょうか。
まず不相当に安い価格で任意売却した場合は、破産管財人に詐害行為で否認されることになります。しかし、そのような価格では債権者が売却を応諾しませんから(少なくともオーバーローンの状態では)、問題になりえません。問題は相当な価格の売却でも、詐害行為の可能性がないのかということになります。
 
破産法は、否認行為の要件の一つに行為の危険性をあげていますが、その有無は、処分によりえられたものが金銭のように隠匿などの危険を発生させるかどうかを判断して決定されます。これを任意売却に当てはめると、それは資産として確実性の高い不動産を売却して現金化する行為でですから、破産債権者を害する危険性は大であると判断されてもしかたがありません。
 
ところで、住宅ローンによって購入した不動産には当然のように、抵当権が設定されていますが、破産財団に属する不動産に設定されている抵当権は破産法上、別除権とされます。そして別除権は、破産手続きによらなくても行使できるとされるのです。この結果、別除権をもつローン債権者は、他の破産債権者に優先して住宅ローンの返済を受けられることになります。
 
ということは、抵当権の設定された不動産については、そもそもその価値は評価額から住宅ローンの残債務額を控除した額と考えるべきであるということになるのです。だとすれば、オーバーローンの状態での任意売却は、他の破産債権者を害するおそれはないわけですから当然のこと、否認の対象になりえないということになります。銀行などが抵当権を設定する意味は正に、ここにあるのです。
 
ただし既にお分かりのように、不動産の価格が住宅ローンの残債額を超えていれば話は別です。この場合は、その差額の限度で他の破産債権者を害する処分として詐害行為が成立する余地が出てきます。ただし実際には、現在の不動産市況ですから、こうした事例はごくごくまれなケースになるでしょう。

 
ところで否認行為が成立するためには、処分行為者本人とその相手方に悪意の意思がなければなりません。つまり、破産者に財産隠匿などの処分意思が必要であり、相手方が、これを知っていなければならないのです。そしてこの場合、悪意の立証責任は破産管財人にありますが、注意が必要なのは受益者が内部者の場合は、悪意の推定がされることです。
 
つまり相手方において、破産者に隠匿等の処分意思がなかったことを証明しない限り、処分行為は否認されてしまうことになります。その理由ですが、破産者の親族や同居人などの内部者は破産者の事情を知っているのが通常であると考えられるだけでなく、内部者の関与で隠匿等の行為がされやすいからです。
 
以上は詐害行為による否認ですが、もう一つの偏頗行為の否認についても考えは同じです。
 

なお、否認行為にあたる任意売却についての裁判所の考えは、「否認権が行使されても、抵当不動産の価値から残債額を控除した残余価値の価値賠償をすれば足りる」ということですから、抵当不動産を原状に戻すような必要はありません。
 

3月も目の前になり、だいぶ春めいてきました。
まもなく桜の季節ですが、この時期、私には憂鬱な季節でもあります。
ご多分にもれず花粉症です。「マスクと目薬」が欠かせません。それでも私の花粉症は桜が満開になるころには、どこかに行ってしまいます。少しの我慢です。
明日は、売却を依頼している千葉市花見川区の業者のところに行きますが、私の対応エリアはこのあたりまでになります。

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